狂騒旋律

ロボからの素敵な脅迫状

タイトル「バッドマリンスノー」

ご閲覧ありがとうございます。ポンコツ筆記のロボです(←意味わからないし)。

今回は、ブログチャレンジ中級編の「小説を発表する」に挑戦してみます。

昨日「詩を発表する」に挑戦したときも書きましたが、どちらかと言うと、そう言う詩とか小説のほうが本業なので、あまりチャレンジにはなりませんが、がんばってみます。ちなみに今回もロボが書きました。

2時間くらいで書いたので、面白いかはわかりませんが、以下、小説「バッドマリンスノー」です。

 

タイトル「バッドマリンスノー」

 それはとある深海魚のお話から始まります。

 彼は海の深い深い底に住んで居ました。
そこは、日射しと言うものの射さない、冷たく真っ暗な世界でした。
自分達がどんな姿で、どんな場所にいるのかは、触覚と、2つの流れによって理解していました。
1つは、血液の流れ。もう1つは、潮の流れでした。
血液の流れは、心拍数でよく分かりました。潮の流れは、皮膚を撫で、匂いを運んできました。

 食べるものは、海の上のほうから降ってくる、ふわふわした雪のようなものでした。

 彼はある日から、不思議なことに気付きました。
いつも食べているふわふわしたものが、おかしな味と匂いをさせているのです。
「一体これはなんだろう?」と、彼は思いました。
「どうしたんだい? そんなに心臓をどきどきさせて」と、友達が聞いてきました。
「ご飯の味がおかしいんだ」と、彼は言いました。
「確かに、君の口はおかしなにおいをさせているね」と、友達は言いました。「でも、最近はみんなそんなもんだよ。気にするだけ無駄さ」
そう言って、友達はどこかへ泳いでいきました。

 ですが、彼はどうしても納得が行きませんでした。
「こんな変な味のご飯を食べていたら、きっとすぐに死んでしまうぞ」と思ったのです。

 彼は、勇気を出して水底から上を見上げました。
そして、力強く泳ぎだしました。このふわふわと降ってくるご飯が、なんで出来ているか、正体を突き止めようと思ったのです。
 生まれた時から、彼等には目がありませんでした。光のない世界では、無用なものだからです。
でも、上のほうから降ってくるふわふわしたものが、食べられるものであるのは知っていました。
匂いが食欲を刺激し、無意識に彼等は「食べる」と言う行動を学習していたのです。
でも、こんなにおかしな味で、奇妙なにおいのご飯は、食欲を刺激しませんでした。
「愚鈍な僕にも分かったくらい、おかしな味なんだ。きっと、ご飯に何か変なものが混じっているんだ」
彼はそう察していました。

 どれだけ泳いだでしょう。彼は、波の流れが生ぬるくなってきたのを感じました。
水の中の上の世界がどんなものかは知りませんでしたが、きっとずっと上のほうまで来たに違いないと彼は勘づきました。

 不意に何かが皮膚の一部に触れました。彼はぞっとして身をひるがえしました。
その触れたものは、ゆっくりと沈んでゆく途中のようでした。その沈んでゆく「何か」から、強い臭いがするのが分かりました。
それは、彼が初めて嗅いだ「腐敗臭」でした。水底の、完全に分解されたご飯とは全く違うにおいでした。

 どんどん上のほうをめざしていると、沈んでくるものがたくさんあることに気付きました。
さっきと同じ「腐敗臭」を漂わせているもの、動かなくなったとても細かく小さな生き物、鋭い石の欠片のような不思議なもの。
彼は、この小さな生き物は食べれそうだ、と思い、吸い込んでみました。
途端に、口の中に強烈な違和感を覚えました。水底で食べていたご飯のおかしなにおいを、数十倍、数百倍に強めたような感覚でした。
 彼は吸い込んだ生き物を吐き出しました。口の中に、何かが残りました。砂のような、ですが、砂にしては妙に軽い、小さな粒でした。
臭いは、その粒を吐き出しきるまで口の中に残っていました。
「これがご飯に混じっていたものだ」と、彼は理解しました。
「おや。こんにちは」と、誰かが声をかけてくれました。「見慣れない方ですね。何処の海からいらっしゃったのですか?」
「海とは何ですか?」と、彼は聞き返しました。
「私たちの住んでいる、この世界のことです」
と、親切な誰かは教えてくれました。
「ああ、あなたは目があおりにならないから、よく分からないのですね。ここは、太平洋と言う、世界で一番広い海ですよ」
「私は、ここよりずっと寒い、深い場所からきたのです」と、彼は答えました。「私の住んで居た水底に、おかしな異変が起こっているのです」
 彼は、その異変についてを、親切な誰かに打ち明けました。
「それは、この世界のどこの海でも起こっていることなんです」
 親切な誰かはそう教えてくれてから、聞いてきました。「さっき、あなたはオキアミを吐き出していたでしょう?」
「あの小さな生き物はオキアミと言うのですか。はい、確かに吐き出しました。おかしな味がしたもので」と、彼は答えました。
「オキアミは、プラスチックと言う化学物質の小さな破片を食べてしまうんです」
と、親切な誰かは少し残念そうに言いました。
「私達は、もう慣れっこになってしまっているので、破片ごとオキアミを食べていますが、確かに、海の底の清浄な世界から来たなら、驚くでしょうね」
「プラスチックとは何ですか? 化学物質と言うのは一体…」と、彼は問い重ねました。
 親切な誰かは、その質問の一つ一つに丁寧に答えた後、言葉を選ぶように、「地上と言う世界があることは…ご存じないですよね…」と呟きました。
「海以外の世界があると言うことですか?」と、彼は言いました。「確かに、存じ上げません」
「この海をさらに上昇すると、大気と言うものに包まれた世界が存在します」
 親切な誰かは秘密を打ち明けるように言いました。
「そこには、土や岩でできた陸と言う場所があり、私達とは全く違った生き物が住んで居ます。その生き物の中で、一番多いのが、人間です」
「ニンゲンとは、どんな生き物なのですか?」
「私達より大きく、時には私達の仲間を大量に連れて行ってしまう生き物です。おそらく、食べるためにでしょう」
「それは恐ろしい生き物ですね」と、彼は言いました。
「ええ」と、親切な誰かは短く答え、話をつづけました。
「人間は、海に色々なものを捨てます。その中の一つに、プラスチックがあるのです」
「何故、ニンゲンはそんなに危険なものを海に捨てるのですか?」
「プラスチックだけではなく、陸で要らなくなった色々なものを海に投げ捨てるんです」
と言って、親切な誰かは水の上のほうを見たようでした。
「ガラスや鉄の塊やアルミニウム等、自然界では分解できないものもです。きっと、海の中で砕けて、目に見えないほど小さくなれば、自分達に害はないと思っているのでしょう」
「なんて横暴な!」と、彼はつい言葉を荒げました。「失礼しました。ですが、海には私達がいるではないですか」
「私達は、魚と呼ばれる種族です。人間からみると、観賞するか、殺して食べるか、と言う存在なのですよ」
 親切な誰かは、悲し気にこうつなげました。
「私達が、オキアミの命に関心がないように、人間も、私達の命には関心がないんです」
 それを聞いた彼は、心臓がはじけそうなほど強く打つのを感じました。それは、彼が初めて感じた「怒り」と言う感情でした。
 親切な誰かは、それを悟ったようで、なだめるように言いました。
「ですが、私達は化学物質を食べてしまいます。その私達を人間達が食べたら、きっと人間は報いを受けるでしょう」
「あなた達は…」と、彼は何とか言葉を振り絞りました。「何故自らを犠牲にして…」
「そうするしか、方法がないからです」と、親切な誰かは努めて穏やかに言いました。
でも、その心臓が、悲しみと怒りを抑えている波を出しているのに、彼は気づきました。
「さぁ、そろそろ日が沈みます」と、親切な誰かは言いました。「方向が分からなくなる前に、水底へお戻り下さい。あなた達は、まだ生きられる」
「最後にお願いがあります。親切な方」と、彼は言いました。「あなたが、どんな姿をしているのかを教えて下さい」
 それを聞いて、親切な誰かは、彼の周囲をぐるりと泳いでみせました。
 その波の形から、彼は親切な誰かが、つんと尖った背鰭と胸鰭を持った、中型の魚であると分かりました。
「人間には、ハタタテダイと呼ばれています」と、親切な誰かは言いました。
「ニンゲンのつけた名前なんて」と、彼は言いました。「さようなら。親切な方。私は生涯、あなたから聞いたことを忘れません」
「さようなら。お気をつけて」そう言って、ハタタテダイは静かに泳いでいきました。


 深海に戻った彼は、それからも化学物質の臭いがする、ふわふわしたご飯を食べ続けました。
そして時折、海の上を向いて、ハタタテダイから聞いた話を思い出していました。
「今に見てろ!」と、彼は心に決めていました。「僕を食べたら胃袋が破裂するような、猛毒を持って見せるからな!」

 

 世界の海では、今まで投棄されたプラスチックのうち、1%しか回収されていないと言います。
 生物濃縮の結果、異物を食べた海洋生物を食べると、人体に悪影響を及ぼす可能性があるということも。

 

 鋭い痛みが、ハタタテダイの脇腹を貫きました。浅瀬に日光浴に出たところを、モリでつかれたのです。
「さようなら」と、ハタタテダイは力を振り絞って呟きました。「ついにこの時が来ました。深海のあなた」
口からこぼれた泡が、かぽんと水面ではじけました。